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@バス停(OP)
青空、木漏れ日などなどのカットの後でベンチに座る比瑪。ハーモニカの音。

テロップ「DVカメラ撮影」
テロップ「バス停 PM 1:05」

比瑪(MONO)「私の名前は雪村比瑪。一応作家。週刊ORE-stepにコラムを連載中で、
   今日はその連載100回目の原稿を書き上げた記念すべき日。だけど……」

  一心不乱にハーモニカを吹き続ける葛山。頭を抱える比瑪。

比瑪(MONO)「その記念すべき日に何故かこんな変な人に付きまとわれてる。
   これが世に聞くストーカーというヤツなのだろう。私に一目惚れしてしまったに
   違いない。迷惑なので、正直、勘弁して欲しいと思う。」

  比瑪、ため息をつく。それには気を止めない葛山。比瑪、空を見上げる。

比瑪(MONO)「でも、例えストーカーに付きまとわれてても、仕事は絶対やり遂げる。
   私には夢がある。一流の作家になるって、父の墓前で約束したから。」

タイトルロゴ「約束」


A 喫茶四季
喫茶店の窓側の席。比瑪が入ってきて座り、鞄から雑誌を取り出して読み始める。
沢木俊樹がメニューと水を持ってくる。

テロップ「喫茶店「四季」AM 10:10」
沢木「(水とメニューを置きながら)いらっしゃいませ。本日のお勧めメニューは
   チェリーパイとなっておりますが、ご注文の方はいかがなさいましょう?」
比瑪「じゃあそれで。(メニューを返す)」
沢木「かしこまりました。」

  沢木、退出。すぐに比瑪の携帯がなる。

比瑪「(携帯をとりながら)ハイ、もしもし?」
尾室(電話の声)「ああ、比瑪さん。ORE-stepの尾室です。」
比瑪「ああ、尾室君。ちょうど良かった!今朝パソコンから原稿送ろうと思ったんだけど、
   何故か遅れなかったの。」
尾室(電話の声)「スミマセン、どうも昨日からウチのメールサーバーがいかれちゃってて、
   外部に接続できなくなってるみたいなんです。それで、原稿どうなってます?」

  比瑪、自分の鞄を探してフロッピーを取り出す。

比瑪「とりあえず、フロッピーに落としてる。」
尾室(電話の声)「スミマセン。でしたら本当にすみませんけど、
   今回の原稿はそれを直接手渡しでってことでいいでしょうか?」
比瑪「いいよ。それじゃあ12時に丘の上公園で待ってるからね!」
尾室(電話の声)「丘の上公園?いや、僕、そこ知らないんですけど……」
比瑪「大丈夫!私は知ってるから任せて!じゃあ後でね!(仕度を始める)」
尾室(電話の声)「いや、そういう問題じゃなくて!もしもし!比瑪さん?もしもーし!!」

  比瑪、電話を切る。雑誌とフロッピーを鞄にしまって颯爽と立ち上がる。
  携帯をしまい忘れる。が、それに気付かず颯爽と出て行く。沢木が出てくる。

沢木「(出て行った後を見つめつつ)おや……。チェリーパイ……。お勧めなのに。」


B 編集部
秋山がふんぞり返り、沢木翔一が机に付いて作業中。尾室は立って電話中。

テロップ「ORE-step編集部 AM 10:15」
尾室「はぁ……。切れちゃった。どこだよ。丘の上公園って。しかも、12時?」
秋山「(誰に語るでもなく)……まず、駅を出て、国道をまっすぐ行く。」

  尾室、秋山のほうを向く。

尾室「編集長、ご存知なんですか?」
秋山「ガソリンスタンドのある交差点で左に曲がり、二つ目の交差点を右だ。」
尾室「(メモを取りつつ)左に曲がって、二つ目を右……と。ありがとうございます!」

  出て行こうとする尾室。沢木、作業を中断して、地図を持って呼び止める。

沢木「ああ、ちょっと!地図です。念の為お貸ししときます。(尾室に地図を渡す)」
尾室「ありがとうございます!沢木さん。じゃあ行ってきます!」

  尾室、退出。

沢木「元気がいいのはいいですねぇ。編集長。」
秋山「それと仕事ができるかは別問題だけどな。それに今回は少々勝手が違うだろ?」
沢木「そうでしたね。北条さんに連絡はいいんですか?」
秋山「今からだ。(電話を取る)もしもし、俺だ。丘の上公園に12時。よろしく頼むわ。」


C丘の上公園
  ベンチに座っている比瑪。尾室は来ていない。

テロップ「丘の上公園 AM 12:00」
比瑪「そろそろのはずなんだけど……。尾室君。来ないねぇ。」

  深海が現れる。比瑪に声を掛ける。

深海「あの、ORE-stepのコラムを書いていらっしゃる比瑪さんですか?」

  比瑪、怪訝そうに深海を見る。

比瑪(MONO)「(空を見上げながら)はぁ……、私のファンか。人気作家はつらいわね。
   タウン誌の隅っこにコラムを書いてるだけなのにもう顔が売れちゃったのね。」

  比瑪、もう一度深海の顔を見る。

比瑪(MONO)「でも、ここでフレンドリーに対応すると、生活し難くなるよね。多分。
   ちょっとファミレスで原稿を書いてるだけでファンの子たちに囲まれたりして。
   ……それはかなり困る!ここは心を鬼にしてっ!!」
深海「あの、比瑪さんですよね?」
比瑪「(サラリと)人違いです。」

  立ち去る比瑪。特に追いかけないが困った顔をする深海。

深海「人違いか……。そうなのか?おかしいな。そんなはずは……。」

  周りを見渡す深海。誰もいない。

深海「……時間にルーズなのかもな。」


Dそこから少し離れたところ
  歩いている比瑪。

テロップ「丘の上公園近傍 AM 12:05」
比瑪「はぁ。尾室君にフロッピー渡してさっさと帰ろうと思ってここにしたのに。
   待ち合わせ場所変えないと……。電話しよ。」

  鞄を漁る比瑪。が、携帯は無い。

比瑪「あれ?携帯が無い。おかしいなぁ。」


E喫茶四季
  尾室が座っている。尾室、比瑪の携帯を手にとっている。小川も新聞を読んでいる。

テロップ「喫茶店「四季」 AM 12:10」
尾室「携帯の忘れ物か……。まあ、これは置いといて場所の確認をしないと。
   ……既に遅刻だけどな。」

  尾室、携帯を置き、手帳を取り出す。

尾室「(手帳を見ながら)ええと、左に曲がって、二つ目を右。間違い無い。
   (辺りを見回す)けど、ここは喫茶店であって、決して公園ではない。
   ……俺、ひょっとして嫌われてる?」

  沢木利樹が注文を取りに来る。

沢木「(水とメニューを置きながら)いらっしゃいませ。本日のお勧めメニューは
   チェリーパイとなっておりますが、ご注文の方はいかがなさいましょう?」
尾室「(驚く)沢木さん!?何でここにいるんですか!?」
沢木「(動じず)私は確かに沢木ですが、お客様、どちら様ですか?」
尾室「尾室ですよ!何言ってるんですか!」
沢木「尾室さん?多分始めてお会いすると思いますが。それよりご注文は何でしょう?」
尾室「(メニューを見ながら)スミマセン。ちょっと待ってください……。
   (MONO)無視かよ。はぁ。やっぱり嫌われてるんだな。」
沢木「本日はブラジルからいい豆が入ってますので、コーヒーもお勧めです。」
尾室「(ささやかな反抗)じゃあコーヒーを。ただし、カフェイン抜きで!」

  尾室の差し出したメニューを受け取る沢木。

沢木「かしこまりました。」

  沢木、下がる。その時、新聞を読みつつ語りだす小川。そっちを見る尾室。

小川「コーヒーはブルーマウンテン4、ブラジル5、モカ1の混合豆が
   一番だと言われている。……カフェイン抜き?……ハッ!(鼻で笑う)」

  『何だコイツは!?』な表情の尾室、視線を戻す。

尾室「……そ、そういえば、沢木さんから地図借りてたっけ。」

  尾室、地図を広げる。が、どこからどう見ても世界地図。尾室、しばし硬直。

尾室「(奥に向かって)沢木さん!そんなに俺のこと嫌いですか!?」
沢木「(奥から顔を見せつつ)騒がしいお客様を迷惑に思うことは事実です。」
尾室「仕方ない、とりあえず比瑪さんに連絡しよう……。」

  電話をする尾室。すぐそこで鳴る置忘れの比瑪の携帯。尾室が切ると携帯が鳴り止む。

尾室「……もうイヤ。」


F道端
  さっきと同じ場所。歩いている比瑪。

テロップ「丘の上公園近傍 AM:12:30」

比瑪「こうなったら直接編集部に持っていくしかないよね……。ふう。やれやれ。」

  歩いている比瑪。声がかかる。

葛山「すまない、お嬢さん。ちょっと道を尋ねるが、丘の上公園はこっちでいいのか?」
比瑪「ハイ。ここまっすぐ行けばすぐです。(指差す)」
葛山「ありがとう。ちょっと待ち合わせに遅刻気味でね。助かったよ。」
比瑪「どういたしまして。」

  葛山に指差したのと反対の方向に歩き出す比瑪。公園の方に歩き出す葛山。
  が、葛山、2,3歩歩いて立ち止まって考え込んだ後比瑪を追いかけて声を掛ける。

葛山「なあ、アンタ。人違いだったら悪いんだが、ひょっとして雪村比瑪か?」

  比瑪、立ち止まって、ため息をつく。

葛山「俺はこういう者なんだが……(名刺を渡す)。」

  『2000の必殺技を持つ男 人呼んでハーモニカ刑事 葛山 吾郎』の名刺のアップ。

比瑪「……ハーモニカ?」
葛山「(ハーモニカを取り出しながら)こいつだけが俺の友達さ……。」

  不敵な笑みを浮かべる葛山を見て、しばし硬直する比瑪。どう見てもただの変人。
  無視して歩き出す比瑪。追いかける葛山。

葛山「なあ、アンタ。どこに向かってるんだ?」
比瑪「(葛山の方は見ないで)とりえあずバス停です。」
葛山「おお、奇遇だな。俺も実はバスに用があるんだよ。一緒に行こうぜ。」
比瑪「(葛山の方は見ないで)さっき、公園で待ち合わせって言ってたじゃないですか。」
葛山「急用だよ。急用!」

  比瑪、無言で歩くペースをあげる。追いかける葛山。

葛山「なあアンタ、ORE-stepの人なんだろ?俺の特集組まねぇか?「さすらいの刑事の
   素顔に迫る!」とか。差し当たって、明日の12時、公園で取材を受けてやる。」
比瑪「(呆れ気味に)……仮にも警察の人が、そんなことでいいんですか?」
葛山「何が?」
比瑪「いきなり仕事を放り出したり、個人的に取材を申し込んだり。」
葛山「硬いこと言うなって!……それよりバス停行くんだろ?さっさと行こうぜ!」

  すたすた歩いていく葛山。ため息をついてから追いかける比瑪。



2に続く。