TAWASHI




テロップ「時に200X年。」
テロップ「異常気象により、世界は未曾有のTAWASHI不足に襲われた。」
テロップ「TAWASHIを求める人々の群れは暴徒と化し、街という街を破壊し尽した。」
テロップ「事態を重く見た国連は『TAWASHI禁止法』を発令。」
テロップ「混乱の収拾を試みたのだった…。」

タイトルテロップ「TAWASHI」



○畑
  農作業中の男。

男1(MONO)「上質なTAWASHIの栽培に必要な条件は、素晴らしい自然。
   即ち、澄んだ空気。清らかな水。肥えた大地。それに、ペプシコーラ」

  畑にコーラを注ぐ男1。

男1(MONO)「コカコーラはいけない」
男2「おーい!ボブ!」

  男2が近付いてくる。

男1(以下ボブ)「どうした?」
男2「隣のファームなんだが…。まだ収穫できそうにない。一体どうなっているんだ?
   春に種を蒔いて、秋に収穫するものなんじゃないのか?
   …アンタ、俺を騙したんじゃないのか!?」
ボブ「落ち着けよ。トーマス。ちゃんと土の中を掘り返してみたか?」
男2(以下トーマス)「ああ!」
ボブ「肥料は?」
トーマス「毎朝!」
ボブ「コーラは?」
トーマス「これだろ!」

  コカコーラ。
  無言で張り倒すボブ。

ボブ「これだ」

  ペプシコーラを渡すボブ。
  納得のいかない表情でコーラを持っていくトーマス。

ボブ(MONO)「コカコーラはいけない」

  暗転。

ボブ(MONO)「そう。あれは俺がまだ樹(イツキ)と呼ばれていた時のことだ」



○公園(回想シーン)
  ベンチに座っている学生服を着た高校生風の男女。

女「あのね…。樹君。私、東京の大学に合格したんだ」
ボブ(以下樹)「そう…なんだ。おめでとう。桜井」
女(以下桜井)「樹君は県内だったよね…」
樹「…うん」

  間。

桜井「それで…。樹君。何か用があるから私を呼んだんでしょ?」
樹「…別に」
桜井「そう…」

  再び長い間。

桜井「(話題を変えようとする)ねぇ。樹君。のど渇いてない?
   私、ジュース買ってきてあげる!」
樹「いいよ…。別に」
桜井「いいから!こういうときは何か頼むの!」
樹「…じゃあ、コカコーラ」
桜井「分かった。じゃあ、ちょっと行ってくるね!」

  樹からお金を受け取って駆けていく桜井。
  それを見送って、ため息をつき、ベンチに深くもたれかかる樹。

樹「はぁ…。何やってんだろ…、俺」

  その時、突然ブレーキ音、続いて衝突音が響き渡る。
  ハッとする樹。思わず桜井が駆けていった方を見る。
  駆け出す樹。
  暗転。

樹(MONO)「そして、彼女は東京よりも遠いところに行ってしまった。
   あの日、僕が彼女を呼び出さなければ、コカコーラを頼まなければ…。
   …だから僕は、TAWASHI職人の道を目指した。
   それが、TAWASHIが大好きだった彼女への、せめてもの償いになると思ったから…。」



○畑
  現在。太陽の日差しに目を細める樹。トーマスが帰ってくる。
  その手には、掘り出したての、土まみれのTAWASHIの山。

トーマス「見てくれよ、ボブ!あんたの言ったとおりだ!
   ペプシコーラって、ホントに凄いんだな!!」
樹(以下再びボブ)「(笑顔を浮かべて)まあな…」
トーマス「ようし、今日中に全部収穫しちまうぞぉッ!!」

  腕まくりをして駆けていくトーマス。
  微笑んで見送るボブ。
  まぶしい太陽の光。

ボブ(MONO)「上質なTAWASHIの栽培に必要な条件は、素晴らしい自然。
   即ち、澄んだ空気。清らかな水。肥えた大地。それに、ペプシコーラ」

  暗転。

ボブ(MONO)「今年も、豊作だ」